Sunday, February 21, 2016

凍りのくじら (講談社文庫)

辻村深月の本は2冊目。前回は「ツナグ」を読んだんだけどあれはちょっとライトノベルすぎて面白いけど少し物足りない感じがして、他の本に食指が動かなかったんだよね。今回は人に薦めてもらったのでせっかくということで読んでみたんだけど自分的にはこれは大当たりです。当たりすぎ、といったほうがいいかもしれない。

基本的には頭はいいけどちょっとスレた女子高生が成長していく物語、ということになるんだろうけど主人公の理帆子の心理描写が非常にリアル。写実的、というよりは現実的、という意味で。いや実際こういう女子高生がいたらこわいのでいないと信じたいけど、現実的な描写のせいで本当にいるのではないか、と思わされる。というか。

人間の心が抱える苦悩が古典文学的なほどは仰々しく書かれるわけじゃなく、都合の良い解釈で簡単な解決が与えられるわけでもない。現代社会に生きる人間が持つ本当の等身大の精神的な苦悩、がここにはある。若尾の最後の行動だけはちょっと現実的ではないというか小説上のご都合主義を感じたけど、それ以外はとても現実的で息苦しさを感じるほどだった。

個人的にはプロローグとエピローグ、特にエピローグはなくてもよかったな、という気はする。あれは読者がそんな風じゃないかな、と軽く想像すればよいくらいで。いやあそれにしても、当てられた。まあ小説は小説だから理帆子は苦悩を乗り越えて成長できたけど、しかし現実の人間が同じ問題を同様に乗り越えられるかというとなかなか難しい問題ですよねえ。

これ、特に賞は受賞してないんだね。Amazonでレビュー見てみると評価もそんなに高くないし。そこまで評価の別れる作品だとは感じなかったので意外。しかし誰もが心の中に持つ理帆子、若尾と向かい合ってみるのも一興ではないだろうか。