Wednesday, June 26, 2013

地球最後の皆既日食

月はなぜいつも地球に同じ面を向けているのでしょうか。表面的にいえば、月の公転周期と月の自転周期が一致しているからです。ではなぜ一致しているのでしょう。

これは偶然ではありません。地球と比べると月は小さいため地球の引力に強く影響されます。そのため月は地球に両耳をがっちりと掴まれているような状態になってしまい、自分勝手に自転するすることができない。これは数は少ないけど木星など他の惑星とその衛星でも起きてます。

しかしその力は月だけでなく、もちろん地球にも影響を与えています。月が地球に与える力で最も目立つものは潮の満引きでしょう。潮の満引きがあることで海と大地の間には摩擦が発生します。また、はっきりと目に見える満引きでなくとも大地はその影響をうけ摩擦を起こしています。摩擦があればエネルギーが発生し、わずかながらも熱に変換されます。満引きを利用した潮力発電も同じ理屈ですね。この力が潮汐力です。

潮汐力により摩擦が発生するということは地球の自転速度に影響を与えるということを意味します。実際地球はわずかずつ自転速度が遅くなっていっています。自転速度に影響する原因はいくつかありますが、恒常的に低下する原因としてはこの潮汐力が主になるでしょう。

そして地球の自転速度が低下すると、先ほどの理屈で月の自転速度と公転速度が低下することになります。では月の公転速度が低下するとどうなるでしょう? 月は地球に向かって落ちてくるのでしょうか?

いいえ、月は遠ざかっていきます。

ここが多少直感と反するところじゃないかと思うんですが、質量が変わらないものがゆっくり公転させようとすると、距離を離す必要があります。例えば野球のボールに1mの紐を繋げて自分が回ってみるところを想像してください。ある程度の速さで回ればボールは地面に落ちないで回すことができるでしょう。しかしそこから回る速度を落とせばすぐに落ちてしまいます。ではロープを2倍の長さにして、落とさないようにするにはどうすればいいでしょうか。

答えは速く回ることではなく、ゆっくり回ることです。回転する物体は角運動量というエネルギーを持っており、近ければ速く、遠ければゆっくり回転し、角運動量は保存されるのです。フィギュアスケートの選手が腕を伸ばしているとゆっくり回ってるのに、腕を折りたたむことで回転速度を上げるのも同じ理屈です。ケプラーの第2法則でも同じ説明になります。

このようにして、月は年に3.8cmずつ地球から遠ざかっていっています。

では地球と月が関係する天文学上の現象である日食はどうでしょうか。日食とは言わずもがな、太陽と地球の間を月が通過し、太陽が欠け月の影で暗くなる現象です。日食には大きく分けて皆既日食と部分日食がありますね。部分日食は今回おいておいて、皆既日食のほうですがこれはまた皆既日食と金環食にわけることができます。

先日の満月はスーパームーンであるということで話題になりましたが、月の公転軌道は真円ではなく楕円軌道であるため近地点と遠地点が存在します。そして近地点で満月になればスーパームーンになるというわけです。月が地球に近ければ太陽はすべて隠され皆既日食になり、遠ければ隠しきれず金環食になります。

しかし地球からみて月のみかけの大きさがほぼ太陽と同じであるというのはまったくの偶然です。月の公転軌道が楕円であることによって皆既日食と金環食が起きるというのはかなり奇跡的な現象といっていいでしょう。

ところがさきほど書いたように月は年に3.8cmずつ遠ざかっています。これを計算してみましょう。

(A)地球と太陽の距離 149 597 870 700 m
(B)地球と月の距離(近地点) 363 304 000m
(C)地球と月の距離(遠地点) 405 495 000m
(D)月の直径 3 474 300m
(E)地球の直径(赤道) 12 756 273m
(F)太陽の直径 1 392 000 000m

太陽の視角 = tan^-1(F/A) = 0.5331187
月の近地点の視角 tan^-1 (B/D) = 0.5479066
月の遠地点の視角 tan^-1(C/D) = 0.4909009

ああ、計算してみたらちゃんと近地点で月のほうが太陽より大きく見えて、遠地点で月のほうが小さく見えるますねw よかったw でもかなり近地点に近いですね。ということは金環食のほうがかなり多い、という予測になりますがこれは正しいでしょうか。

逆に太陽の視角と月の視角が同じになる月の距離はどれくらいでしょう。

D/tan 0.5331187 = 373 382 104(m)

これが皆既日食と金環食の境目になる月の距離です。この距離と現在の近地点の差は10078104mで、3.8cmで割ると265213263となります。2億6521万年後には近地点がこの距離まで遠ざかる、つまり2億6521万年後には地球上で皆既日食は見られなくなる、ということです。

地球の軌道離心率など、いろいろな数字を無視しているので正確な値ではありませんが、数億年後には皆既日食が見られなくなる、ということは確実でしょう。地球最後の皆既日食の日、もし地球上に知的生物がいたら、どのような気持ちで空を見上げるのでしょうか。



思いつく無視してる数字

  • 地球の軌道離心率
  • 太陽の膨張率
  • 月の両極を同時に地球から見ることはできないので月の直径で計算すると視角にずれがでる
  • 月が離れていくペースがずっと3.8cmで固定なわけではない
  • Wikipediaの数字を参考にしたけど、月までの距離が地表で一番月に近い部分からの距離のことなのか不明


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