Thursday, September 8, 2005

『SF相対論入門』

SF相対論入門―宇宙旅行と四次元の世界
SF相対論入門―宇宙旅行と四次元の世界
石原 藤夫

これは面白い。星、五つです。宇宙船で準光速で移動するとローレンツ短縮によって外界のものが進行方向に向かって短くなるのは特殊相対性理論からの帰結だが、「実際にはどう目に映るのか」となるとちょっと問題が変わってくる。もし窓から外を眺めたのなら、予想とは違い長くなったり短くなったりして見えるはずなのである。

また、双子のパラドクスに代表される「早く移動する物体の時間の流れは遅くなる」という現象も、普通はこの「移動」を移動してる物体の相対として考えるけど、この本では「宇宙全体に対して」と考える。その結果マッハの原理が適用され、双子のパラドクスは起こらない。これは「ニュートンのバケツ」の再解釈であり、他の本にも同じようなことは書かれているのだけど、この本は非常にわかりやすく説明していると思う。

『宇宙100の大誤解』の筆者はSFやファンタジーが科学への誤解を招く元凶だと非難しているけど、こういう本を読めばSFも科学の説明に使っておかしいものじゃないとわかるだろう。例えばアインシュタインだって論文の中で宇宙空間を飛ぶエレベータを想定しているけど、これだってSFといえる。教育で必要なのはSFを嘘だと教えることではなく、SFをSFとして楽しむ心だろう。

加速度1Gで飛び続けると最も近くの恒星であるαケンタウリまで地球時間12年で往復できるんだね。これってすごいことだと思う。機内時間では5年ほどになるから、5年間加速度1Gで飛ばせ続けられれば、じゅうぶん可能だ。5年連続で持つエネルギーというと核分裂でも不足で核融合に頼るしかないだろう(注1)けど、核融合ってのは実現不可能なものではない。今は技術力があと少し、開発資金が大幅に足りないってだけで。だからワープ技術を待たなくても、100年後に恒星間移動が可能になるってのはちっとも不思議ではないのだ。

この式(光行差の式)を、宇宙船のスピードが光速の20%、60%、また90%の場合についてそれぞれ計算して、第6図のようなグラフにしておいた。なにかのときに、ご利用いただきたい。
光行差。

いや、つかわねーってw なにかのときっていつだよw こういう、浮世離れしたことを本気で語るってのは物理学者の最大の魅力だよなあ。

※1 核融合エネルギーより優良なエネルギー源としてはブラックホールを周回する物質からの放射があるが、恒星間移動宇宙船の動力としては不向きだと思う。また、ブラックホールを周回する宇宙船はエネルギーから得る速度よりも、遠い未来へいってしまうことのほうが問題になるだろう。

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