Sunday, August 28, 2005

『アインシュタインの世界』

アインシュタインの世界―物理学の革命
アインシュタインの世界―物理学の革命
L.インフェルト, 武谷 三男, 篠原 正瑛

アインシュタインの弟子であり、共同研究者であったインフェルトの書いた相対性理論の解説書。後半はアインシュタインとの思い出になっている。

解説書としては、現代的観点からいえば読みにくい、といえる。もちろんこの本が書かれた当時は物理学の本でイラストがいろいろ載っている本もないだろうし、現代の解説書がわかりやすいとしたらわかりやすい比喩が少しずつ進化してきたからだろう。だからこの本は、わかりやすさよりも、アインシュタインが存命中に書かれた(前半)という時代の中で捉えると面白いと思う。

実際相対性理論における幾何学の重要性を非常に強調しているが、イラストがないのだからどのような意味なのかわかりにくいところもあるだろう。しかし当時は、ミンコフスキー、リーマンにより相対性理論が数学的、幾何学的に洗練されて間もない頃だったのだ。アインシュタインが火を入れた鉄はまだ熱く、素人に渡せる段階ではなかった。

しかし、比喩が洗練されていない、でも解説書であるということから逆に重要なことが見えてくる。相対性理論を作った人の目には、何が映っていたのか。アインシュタインにとって、実証は重要ではなかった。理論が最も整合性を備えたとき、自然の完全性が現われると信じていたのである。

「われわれの世界の幾何学はどういうものか?」および「われわれの世界の重力の場はどういうものか?」という二つの問題は、おなじものである。幾何学と重力とは、同義語なのである。


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