この季節、道端によくセミが落ちている。そのうちの何匹かはまだジジッと鳴いている。
そのままでは踏み潰されてしまうので、そんなときは近くの草むらにでも放り投げてやる。きっと蟻が餌にするだろう。
そんなとき可哀想っていうのはなんか違う気がするんだよね。彼は地上の一週間という短い時間を彼なりに生ききったんじゃないだろうか。その意味ではボクなんかより先輩だ。
そんな先輩に哀れみをかけるのはなんか違うなーって気がするんだ。だからボクは道端のセミを見ると、お疲れ様ということにしてる。
生きとし生けるものが、自分の天分を全うし、土へ還っていく。そこになんの哀れみがあるものか。ボクはセミがセミとしての人生を終えたことを知り、ただ彼を送るのみだ。
[あしひきの荒山中におくりおきてかへらふ見れば心苦しも]
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