Tuesday, February 16, 2016

21世紀物理はアインシュタインとともに

先週発表された重力波は天文物理学としての重要性もさることながら「アインシュタインが予想した」というところもキャッチーだったのではないでしょうか。アインシュタインは史上最大の物理学者と言われますが、それに対して「特殊相対論は時代の要請であった」とも言われます。確かに同時代にいたローレンツ、ポアンカレによってほぼ同等の数学的な理論は作られており、あとはアインシュタインが「時間は誰にとっても平等ではない」と最後の楔を打ち込むのを待っている状態であったといってもいい。

しかしアインシュタインは決してそんな小さなスケールで評価されるべき学者ではない。ウィキペディアを見ればわかることだけど彼は特殊相対性理論と一般相対性理論両方をほぼひとりで完成させている。このふたつは名前は似ているけど相当に扱う範囲が異なる別個の理論でありこのふたつが同じ人間によって作られたというだけでも驚きだ。

そして彼は光電効果に関する光量子化説によってノーベル物理学賞を受賞している。光量子化説は量子力学の基本となるものなので、アインシュタインは時空を扱う相対論と素粒子を扱う量子論の両方の始祖とも言える。

しかし功績としては相対論のほうが大きいんだけどなぜアインシュタインは光電効果に対してノーベル賞を受賞したのだろうか。それはノーベル賞が基本的に純理論的な研究よりも実証的、実用的な研究を優先するという事情があった。理論としては完璧でも実証されていなければ受賞できないのだ。だから現代のヒッグス粒子とかでも発見されると賞は発見者と提唱者に送られることになる。

でもアインシュタインの才能はそのような近視眼的なところではなくもっと未来に向けられていた。

まず一般相対性理論が予測する重力で空間が歪むという予想は1919年、エディントンによって皆既日食横に見える星の位置がずれているという観測から実証された。

そして歪みによって後ろにある天体が拡大されてみえる重力レンズ効果も、一直線に並んだ場合にはリング状にみえる(アインシュタインリング)と予想し、実際に1979年に重力レンズ効果が観測され、後にアインシュタインリングも観測されている。このことから20世紀の物理学はまさにアインシュタインによって形成されたといって過言ではない。

そして今回の重力波の予想も100年経った現代において検証され、いまだにアインシュタインの時代が続いているといっていい。また、アインシュタイン方程式における宇宙定数という天文物理学上の予想が残っている。これは宇宙の9割以上を形成するダークエネルギーと関係があり、もしもダークエネルギーが宇宙定数であるならばこれまたノーベル賞確実である。他にアインシュタインが予想したEPRパラドクスから導かれる量子テレポーテーションも通信の世界で実用されるようになれば暗号化において格段の進化となるだろう。

高度に科学が進歩した現代において、20世紀、21世紀にわたってその影響を与え続ける巨人アインシュタイン。ノーベル賞には存命中にのみ与えられるという制限があるけど、それを破ってでも2度目、3度目のノーベル物理学賞を与えてもいいくらいの学者だと思う。
門司港、三井倶楽部にあるアインシュタインの使った部屋

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