Saturday, May 5, 2007

お富の貞操

感動する話なわけじゃないのに、なぜか泣けるなあ。最後の
二十年以前の雨の日の記憶は、この瞬間お富の心に、切ない程はつきり浮んで来た。彼女はあの日無分別にも、一匹の猫を救ふ為に、新公に体を任さうとした。その動機は何だつたか、――彼女はそれを知らなかつた。新公は亦さう云ふ羽目にも、彼女が投げ出した体には、指さへ触れる事を肯(がへん)じなかつた。その動機は何だつたか、――それも彼女は知らなかつた。が、知らないのにも関らず、それらは皆お富には、当然すぎる程当然だつた。彼女は馬車とすれ違ひながら、何か心の伸びるやうな気がした。
http://www.aozora.gr.jp/cards/000879/files/126_14861.html
のところがやたらに来る。ボクも20年後にはなぜここに感じ入るのかわかるようになるのだろうか。怪しい。