Tuesday, November 1, 2005

『物理・こんなことがまだわからない』

物理・こんなことがまだわからない―宇宙から身のまわりのハテナまで
物理・こんなことがまだわからない―宇宙から身のまわりのハテナまで
大槻 義彦

ご存知、大槻義彦教授の著書。わかりやすい説明を目指すブルーバックスの中でも異色の、全編物語り仕立て。高校生が自転車で旅をしつつ、行く先々で大槻教授がモデルの教授と会って物理学の話をする、という本の本筋とはまったく関係のない舞台設定になっている。

それはともかくとして、まったくダメな本ではない。まず物理学の考え方の利点と限界が解説される。ブルーバックスマニアのボクにとっては当然のことだけど、ブルーバックスや科学関連の本自体を初めて読むような人には有益な情報だろう。

タイトルどおり、今でも物理学的にはっきりとわかってない現象がいくつも紹介されるんだけど、ボクが特に面白いと感じたのは第5章の「生活の中の複雑系」に出てくる粉粒体の話。砂粒が多量になると不思議な振る舞いを見せたり、車を粒とみなすことで交通渋滞の予測を行ったりする。こういうのは、力学的な物理学とも統計的な物理学とも違った性質を持っていて、非常に興味深い。

あと、素粒子の研究に必須の加速器も、トリビア的に面白く書かれている。加速器ってのは電子や陽子といった素粒子を電気的に加速して的にぶつけることで素粒子の性質を探る装置だけど、物理学の実験装置の中でも破格にデカい。筑波にあるKEKは周長3kmだし、スイスにあるCERNの加速器など周長が27kmもある。ここで加速された電子は光速の99.9999%にまで達する。

アメリカは80年代にSSCという世界最大の加速器を計画、着工したんだけど建設途中で費用が問題になり計画は頓挫してしまった。一物理ファンとしては残念なことだけど、総建築費が1兆円を超えるようでは仕方ない。しかし大槻教授の本によると、たんに建築費が足りなかっただけではなく、このSSCを動かそうとすると、原子力発電所が10基必要だそうだ(笑 誰か作る前に無理だって気がつけよなー(笑

ところでCERN(欧州合同素粒子原子核研究機構)はWWW発祥の地として有名だけど、日本で初めてWebを公開したのはKEK(高エネルギー加速器研究機構計算科学センター)なんだよね。情報関係やハイテク関係ではなく、素粒子の研究施設が始めたっていうのはちょっと不思議な感じ。