Monday, August 29, 2005

ユニークな物理学者。

ドップラー効果を、電車の上でトランペットを吹いてみるという実験で確かめた人がいる、というのは知ってたんだけど、それがボイス=バロットらしい。ボイス=バロットといえば「風を背に受けて立つとき、低気圧の中心は左手斜め前方にある」というボイス=バロットの法則で有名なオランダ人だ。この人も自分のやってることが宇宙論に関わってくるだろうとは夢にも思わなかったろうに。

ジョージ・ガモフは初めてビッグバンに言及した論文をアルファーと一緒に書いたとき、勝手にベーテという物理学者の名前も載せておいたそうだ。「アルファ・ベータ・ガンマ理論」というわけだ。知らないうちに名前が載ってたベーテもびっくりしただろうが、この人も以前学会誌に適当なデタラメばかりの話を作り上げてのっけた、という前科があるから人のことは言えない。原稿には「ベーテ(不在)」としてあったとアルファーは証言しているが、出来上がった本には不在の表記はなかったようだ。しかも編集者がご丁寧に4月1日号に載せたというから面白い。

物理学者にはこういう逸話に事欠かない人が多い。筆頭は錠前破りの名人で、原爆計画書の入った金庫を空けてオッペンハイマーを青くしたというファインマンだが、他にも物理学の本を読んでいるといろいろでてくる。ジョークが好きな人も多い。アインシュタインなんかはその口で、ジョークが数多く残されている。気に入らない話だと講演者を台から引き摺り下ろした、というパウリのような物理学者もいるけど、どちらかといえば例外だろう。

数学者といえば、餓死したゲーデル、カントールをいじめまくったクロネッカー、引きこもりだったガウス、など非社交的な人間が多い。ガウスは物理学者とも言えるけど。

ベル電話研究所のウィルソンとペンジアスは宇宙背景輻射に関する発見でノーベル賞を受賞してるけど、彼らはほとんど偶然電波を見つけただけで、その発見の意味に気づいたのは他の人なんだよね。MITのディッケ、ピーブルズは同時期に理論的に宇宙背景放射の存在を予測していた。ところがこれには少し裏話があって、ディッケとピーブルズは20年前のガモフ、アルファー、ハーマンの論文を知らなかった、と言っているのだ。畑違いの分野ならともかく、ほぼ同分野で自分と同じことを考えている人がいて、それが偉大な先輩だともなれば知らないと考えるのは多少不自然である。もしかしたらウィルソンとペンジアスがノーベル賞を受賞したのは、そのへんが関わっているのだろうか。