Saturday, September 10, 2005

『タイムマシンの作り方』

タイムマシンの作り方―光速突破は難しくない!
タイムマシンの作り方―光速突破は難しくない!
ニック ハーバート, 小隅 黎, 高林 慧子

まだ全部は読んでないけど、この本はだめでしょ。著者はちゃんと物理学を学んだ人みたいなんだけど、書き方がかなりミスリーディング。

もしもある星が五光年の距離(地球から測って)にあって、われわれがちょうど五年後(つまりわれわれの主観的時間で五年後)にその星に到着したとすれば、われわれは、その距離を光速で航行したことになる。この"実用的"な速度測定法を使えば、光速を達成できるばかりでなく、光よりも速く航行することも簡単である。

この言い方はちょっとむちゃくちゃである。地球の時間と宇宙船の中の時間を比べて、5光年の距離で船内では5年経ってるから光速だ、なんて議論が成り立つわけがない。確かにほぼ光速で飛べば地球に比べて機内の時間はゆっくり流れることになる。だから地球で100万年経っていても機内は数十年しか経過していない、ということだって相対性理論では可能だ。しかしそれを「宇宙船は光速の1万倍で飛んでいる」ということはトンデモだ。なぜなら、光速自体で飛ぶとき、相対性理論によれば時間は止まっていることになる。すると、著者の理屈では「光速で飛ぶ光子は光速の無限倍で飛んでいる」、という無意味な結論がでてきてしまう。

さらに加速してる宇宙船の説明で「船の人々にしてみれば、静止してるのは自分たちなのだから、彼らの時計は正常な速さで進んでいる。」と書いている。もちろん加速してる宇宙船は加速度運動なので、等速運動と違って静止系ではない。

(サーチライトの)光線が空の端から端までをさっと照らすとき、光線の尖端は、遠くまでとどいていればいるほど速く動く。ある距離以上では、光線の運動は実際には光よりも速くなるが、実際に動いているのが何であるのかを考えれば~

これなんてまったくナンセンスな議論だ。著者は「サーチライトを速く動かせば光の先端は光速以上で動くように見えるが、それな幻想だ」と言いたいのだろうけど、実際には光速以上で動くように見えることもない。もし幾何学的に書くことが許されるのなら、サーチライトの光は鞭のようにしなって見えるはずだ。仮にも相対性理論の専門家が、こんな虚仮脅しを使っちゃあいけない。

まだ半分しか読んでないんだけど、これ以降もちょっと眉唾で読まなくちゃね。

ところで数日前のエントリ『SF相対理論入門』に書いた1Gで加速し続けると5年でαケンタウリに着くって話、それ自体は嘘じゃないんだけど、加速し続けると特殊相対性理論に基づいて宇宙船の質量が増加することを失念しておりました。最初の1年くらいは1Gで加速し続けることも不可能ではないかもしれないけど、光速に近づくにつれ質量が増加して1Gの加速を維持することが困難になると予想されます。

ただずっと加速し続けなくちゃいけないわけではなく、例えば2年間1Gで加速すると光速の96%ほどになり、そのとき質量は3.6倍になってるはずです。3.6倍程度までなら、なんとかなりそうな気がする。あとは加速をやめて、等速運動で慣性的に飛んでいけばいいわけです。もし5年間フルに1G加速をしようと思うと、最終的には質量は74倍ほど。これはちょっと無理があると思う。途中で等速運動に切り替える方式なら、ちょっと遅くなるけど船内時間7年くらいで着けるんじゃないだろうか。ちゃんと計算してないんでこれも間違いかもしれませんが。もうちょっと考えてみます。